遺言書を書くための基礎知識

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3 遺言書作成12の鉄則

  1. 遺言は公正証書で作る
    遺言書の型式には主に3つの方法(公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言)がありますが、公正証書遺言で作成しましょう。
    公正証書遺言は、紛失や改ざんの可能性がないため安全で安心です。また、記載内容や形式不備で無効となることもありません。
    裁判所の検認手続きも必要ないので、移転登記や預金の払い出しなどの手続が迅速にできます。
  2. 下書きを作成し、行政書士・税理士と十分な打合せ
    遺言は遺言者の死亡後にその効力が発生します。ところが、遺言の内容に不都合なところがあっても (たとえば相続人の希望を無視した分割内容や相続税を考慮していない分割方法など)遺言者本人は相続後に訂正できません。
    もし、不都合な記載があれば、その遺言の内容が元で相続争いとなります。
    遺言者は相続後の相続人の生活を考慮し、また相続後税金でも困らないように配慮すべきです。
  3. 記載内容は具体的明瞭に
    遺言はどこの誰に、なにをどれだけやるのか正確に記載すべきです。土地や建物については全部事項証明書を準備して地番や家屋番号も間違いのないように記載します。
    預貯金や有価証券も銘柄と数量も正確に記載します。また、遺言で財産を残す相手の身分の特定も正確にするとともに、相手が相続人であれば「相続させる」ですし、 相続人でない人(受遺者)に残すのであれば、「遺贈する」と記載します。
  4. 相続財産は全て漏れのないように
    せっかく作成した遺言でも、遺産の記載漏れがあった場合にはむしろ争いになる場合があります。不動産や有価証券、預貯金、動産(家財道具)など全て記載しましょう。
    仮に相続後に記載漏れの財産があった場合、その財産は相続人全員の分割協議で分割を決めなければなりません。その財産を巡って争いとなります。
    このようなことを避けるには、「その他一切の財産は妻に相続させる」というような条項を最後に入れて下さい。
    その条項で、その条項以前に記載されている財産以外の残り全部の財産の分割が記載されることになるからです。
  5. 実質相続財産の漏れのないように
    相続税の申告が終わるとその申告内容につき、税務署が調査に来る場合があります。問題になるのは配偶者名義や子供名義の預貯金や有価証券で実質的に被相続人の財産であるものです。
    遺言書には記載されていません。税務署は名義上ではなく実質で判断します。配偶者名義や子供名義が実質的に相続財産であるとみなされたとき、その財産は遺言書に記載された以外の財産です。
    これら名義預金等の扱いは税理士に十分相談して下さい。余分な税金を支払うだけでなく相続後の争いも残すことになります。
    「その他一切の財産は妻に相続させる」というような条項だけで補完できないものもありますので注意してください。
  6. 予備的遺言を入れる
    遺言者より先に、遺言の中に記載した相続人や受遺者が死亡することがあります。この場その財産についての遺言は無効となります。
    そこで、相続人や受遺者が遺言者より先に死亡した場合「もし相続人○○が先に死亡していたときは○○の長男□□に相続させる」などの予備的遺言も入れておきます。これにより遺言書の作り直しが不要となります。
  7. 夫婦相互遺言にする
    通常遺言は夫が書くものだという認識が一般的です。しかし妻が先立つことも例外ではなく、妻固有の財産がある場合も考えられます。
    一度夫が相続するのか、または直接子供に相続させる場合でも、夫の財産も子供に相続されることも考慮の上分配を考えます。
    また子供のいない夫婦であれば、最終的に夫婦の両方が死亡した場合には財産はどうするのか決めておく必要があります。
  8. 遺留分を考慮する
    相続人には法律で最低限認められた遺留分があります。(被相続人の兄弟姉妹が相続人であるときは遺留分がない)その遺留分を考えない遺言は争いとなります。
    遺留分の侵害請求を起こされれば、必ず財産の分配をしなければなりません。相続は極力平等にしなければなりません。
    事業承継など特別な理由があり、どうしても一部の相続人に偏った相続をさせる場合でも、その他の相続人にも遺留分を満たす財産の配分をすることとその理由も遺言書に記載しておきます。
  9. 特別受益を考慮する
    特別受益とは、被相続人の生前に特別の援助を受けた利益(特別な学費、商売の資金援助、マイホーム資金など)をいいます。この利益は相続分を決める場合に考慮しなければなりません。
    具体的には、相続人が妻と長男と次男とします。次男にのみ生前にマイホーム資金として1000万円を贈与していて、長男にはしていないとします。
    そして相続財産が3000万円だった場合、3000万円に1000万円を足した4000万円を相続財産として遺産分割します。
    仮に法定相続分で分けると、妻が二分の一の2000万円、長男が四分の一の1000万円、次男が四分の一の1000万円となります。
    しかし、次男は既に1000万円のマイホーム資金を贈与されているのでこれを差し引きます。したがって次男の相続分は0円ということになります。
    このマイホーム資金1000万円部分が特別受益となりますので、遺言でもこの金額を考慮して作成します。
  10. 寄与分を考慮する
    相続人の中に、被相続人の事業の発展に貢献した、被相続人に生活費などの給付をした、被相続人の病気の看病をしたなど、被相続人の相続財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、その者の働きの評価額(寄与分)を相続財産から引いた残額を「遺産」と仮定して相続分を計算することになります。
  11. 遺言書は納得がいくまで書き換える
    一度遺言書を作成しても、財産の移動、評価額の変化、相続人に対する思いの変化など、遺言書の内容は、時間の流れとともに不都合な内容になる場合があります。
    遺言書は定期的に点検することと何度でも書き直すことです。新たに遺言書を書き直すことで古い遺言書は失効します。
    一部の相続人に強く勧められたとか、金融機関に勧められたとかで、あまり納得のいかない内容であれば遠慮なく書き換えましょう。
  12. 遺言執行人を指定する
    遺言者の死亡後、遺言の内容を実現する責任者が遺言執行者です。遺言執行者には、相続人代表や受遺者、専門家(弁護士や税理士、行政書士など)がなることが多いようです。
    この場合遺言執行者は専門家に頼んだ方がよいでしょう。専門家は相続手続きに熟知しているとともに、相続人に公平な立場で執行出来る人格者であることが求められます。
    被相続人の意志を十分理解し相続人の相続後の生活の安定を考えていただける人がベストでしょう。遺言執行者を専門家に依頼する場合には遺言書にその旨を記載すると同時に、執行報酬も事前に取り決めておき遺言書の中に記載しておくのが良いでしょう。専門家に頼む場合の報酬の相場は、30万円~遺産総額の3%の間です。